COLUMN
神田神保町と「グルメ」
神田神保町。一般的には単に神保町と言った方が馴染み深いかもしれないが、この地名を聞いて真っ先に思い浮かぶのはなんといっても「本」だろう。
前回、「神田神保町と本」という題材で少し書かせていただいた。書店の衰退についてそれっぽく書いたつもりだったが、ギリギリ昭和生まれ&神保町勤務歴1年足らずの若輩者の身である私が語っても薄っぺらいだけだ。実際、改めて自分で読んでみても薄っぺらい。これはマズイ。うん、無理して背伸びするのはやめよう。
ということで、今回からは本当に自分が肌で感じたこと、関心があることを書いていこうと思う。となれば、やはり真っ先に思い浮かべるのは食、つまりグルメである。どこかで誰かが言っていた。食べることこそが人生最大の楽しみである、と。
前回も少し触れたように、神保町には今やたくさんの飲食店が軒を連ねている。平日には決して途絶えることのない大学生や専門学校生、会社員たちの空腹を満たし続けている。その種類は多種多様であり、大手チェーンから昭和の匂いを感じさせる(私はほとんど嗅いだことなどないが)定食屋まで、ありとあらゆる種類のグルメが取り揃えられている。下手をすると、一年間毎日違う店に通うことすら可能かもしれない。
せっかくこれだけ店があるのだし、私も色々行ってみようと思い至った。さながらニュース番組のグルメリポーターのごとく回ってみること約1ヵ月。安くて美味い料理だけでなく、面白い体験もしばしば味わうことができたのだった。
中でも印象に残ったのは、長年続けてきたと思われる年配の方が経営している店だ。もちろん、すべての店がそうではないとは思うが、私の体感としては不愛想な店が多かった。ニコリともせず淡々と料理を作って客の前に出す様子はなかなかシュールな光景だ。といっても、別段不愉快に感じたわけではなく、「お、職人っぽいな」というのが一番の感想だった。時には店に入っても「いらっしゃいませ」の一言もなく、お手伝いさんのようなお婆さんがぼーっとこちらを見つめているだけなんてことや、突然店長と奥さんが夫婦喧嘩を始めるなんてこともあり、心を無にしながら黙々と箸を進めるなんてこともあった。それでも味は確かなのだから文句はない。むしろそういう人たちが作る料理だからこそ一味違ったものが出せるのかもしれない! ・・・なんていうのはちょっと言い過ぎだろうか。
とにかく、今回言いたいのは、神保町に来たならぜひそういう店に入ってみることをオススメしたいということだ。チェーン店ならばどこの町にでもある。ここでしか味わえない一風変わったグルメと体験をご賞味あれ。
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